音信不通になった人の中でも、ひと際癖の強かった「むとんちゃく」さんの曲を紹介したいと思います。
この人と初めて会った日には私はシンセを持って行って、この人がいったいどんな声で、どんな音域まで声が出せるのか、などを知りたかったのです。で、近所のカラオケボックスに行きました。
カラオケの機材を外して、外部入力だけにしてシンセを繋ぎ、いざ音を出すのですが、彼女はあまり乗り気じゃなかったのか、ちっとも声を出したがらないのです。
前回も書きましたが、このむとんちゃくさん、いつも何かに怯えているようで、私が話しかけるといつも「ビクッ」とさせて、恐々していたのでした。
変な人。本当にこの人は歌う気があるのだろうか?
と私は若干の疑いの目を向け始めました。
ただ、彼女が唯一やる気を見せたのが、自分が歌ったという以前組んでいたユニットで作って録音したデモテープ・・・正真正銘のカセットテープと、昭和の香りがプンプンするデカいカセットデッキを持参していました。
「ほほう、これがあればとりあえずどんな曲で、どんな声なのか、わかるだろう」
ここからがむとんちゃくさんの本領発揮です!
カセットを入れて、再生ボタンを押しても、カセットデッキはウンともスンとも言わない・・・
要するに壊れていたんです、デッキが。せっかくのテープが台無しでした。
見るからに古そうな、どこに保管してあったんだという位の寂れたデッキでしたから、壊れていても仕方ありません。ただ疑問なのは普通、人に歌声を聞かせるための機械は試運転して、動作確認するのが当たり前のように思うんです。
それを怠った(あるいは突然壊れたのかも?)のが「むとんちゃく」さんの無頓着ぶりをいかんなく発揮した瞬間でした。
仕方がないので、普通にカラオケで歌声を聞いてみることにしました。
ここでもむとんちゃくさん、ちょっと変わった人です。
選んだ曲が
「たま」の「さよなら人類」
でした。おまけにカップリング曲の「らんちう」も歌い出しました。
私は「たま」自体は嫌いではなく、この「さよなら人類」のシングルCDも持っていましたので、彼女が一体何を目指して歌っているのか、よくわかりました。
つまり「たま」の物まねで歌っているんです。なんだか不安になりました。
まさか持ってきたデモテープも、たまっぽい曲だったりするんだろうか?
まだこの時点で、そのデモテープの曲をやるのか、イチから曲を作るのかは決めていませんでしたので、とりあえずその聴くことのできなかったテープを借りて、私がカセットプレイヤーを買って一度聴いてみる、という事でその日は終わりました。
そして家電量販店で安いカセットプレイヤーを買いまして、デモテープを聴いてみたんです。そしたらこんな曲が収められていました。
これは例のテープに収められていたデモ音源を基に私がアレンジしたものです。アレンジとはいっても、完成度が高くほとんどフレーズ自体は変えていません。
全然「たま」と違う!
なんてカッコいい曲なんだ!もちろん実際にはむとんちゃくさんが歌ってて、それも良い声で歌っていました。残念ながらそのテープは残っていないので、歌のメロディーがわからないのですが、雰囲気は伝わると思います。
ここまでの実力がありながら
音信不通
とは、実に惜しい人物でした。そして怪しい人物でした。あと付け加えると、とても「良い人」でもありました。そのあたりの話はまた後日、お伝え出来たらなと思います。
今回はこれで筆を置きます。では、また。
きよ
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