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変わった人の話を「晒そう」と思います。
ある日、一通のメールがバンドメンバー募集サイトから送られてきました。
「自分は難病でもういくばくも命がありません。つきましては、作りかけのギター弾き語りの曲があるのですが、それを編曲して演奏してくれる人を探している」
というような内容でした。
「いろんな人がいるもんだな。これはある種の人助けだろうから、引き受けてみるか」
これが【事件の引き金】だったのです。
一度会って話をしましょうという事で、駅の中にあるドトールコーヒーで待ち合わせました。
その人は車椅子でやってきました。そこで今回の話の趣旨を聞きまして、カセットテープを私に託して、「これに自分の弾き語りが入っているが、あまりにも稚拙なので体裁を整えたものを作ってほしいです。」と頼まれました。報酬として1000円払う、という事も約束しました。私としては金は要らないのですが、相手がどうしてもというので、引き受けることにしました。ついでにドトールの支払いもしてくれました。
「どんな人かと思ったら、すごい良い人だな。これはいい仕事をしなくては。」と私もやる気にかられました。
自宅に帰りまして、(とある事件で買う羽目になった)カセットプレイヤーでそのテープを聴いてみましたが・・・「こ、これは・・・・・・・・・?」
テープは、その人の長々とした語りから始まり、なかなか歌い出しません。で、5分くらい喋り終わったとに、ようやく歌い出しました。
歌い出したのは良いのですが、なんとギターは演奏されておらず、アカペラで歌われていたのです。そして歌はヨレヨレの声で、やっとの事で歌と言えるレベルで歌っているというか呟いているというものでした。
「これを耳コピして、曲に仕上げるのは相当難しい・・・」と私は首をかしげました。それでもこの人(この人は自分のハンドルネームを【ハッピー】さん、と名乗っていました)は難病を押して頑張ってこれを作ったのだから、頑張って期待に応えなくては、と私も意気込んで制作に臨みました。
まず、ハッピーさんが持参してきた演奏の音源からお聞きください。ちなみに冒頭の語りはバッサリ切ってます。
いかがでしょうか?「それでもこのハッピーさんの寿命はあとわずか。何とか形にして見せる!」と私なりにメロディーと歌詞を解析して、何とか一曲のデモ音源に仕上げました。
ただどうしても音程がわからい箇所があり、そこはごまかしながら歌っています。
出来上がった音源を指定された住所に返送しました。
するとすぐにメールが届きまして、
「ありがとうございます、こんなにしっかり編曲してくれて、涙が出ました」云々
そんなに感謝されるとは作り冥利につきるなぁ、とこちらも悪い気はしませんでした。
ここから【悪夢の事件】が起きるとは、予想だにしませんでした・・・
あくる日、こんなメールが届きました。
「私はきよ音楽事務所を立ち上げました。ひいては
- 楽曲提供はきよさん
- 新規ボーカリストの勧誘、面接、プロデュースはハッピー
- 女性限定、年齢は20~35歳まで
- 顔写真を提出ののち、面接
- 事務所の住所は(ハッピーさんの住所)
という事を決めてジモティーに掲載したので、よろしくお願いします!」
おいおい!これって「ヤリ目(やりもく)」じゃん!?
やる気満々じゃん!?
犯罪の臭いがするじゃん!?
・・・・・・・
私はあわててメールを送りました。
「なんですか、これは?私はこんな事を承諾できません!今すぐに記事を削除してください!」
すると返信が来て「申し訳ございません、すぐ消しますのでご勘弁ください」
勘弁できるか!
車椅子で余命いくばくもない人の助けになるかと思いきや、単なる肉欲の塊だったのです。私は怒りを過ぎて笑いさえおきました。
「女性メンバーとくっつちゃうケースはままあるが、こんなにあからさまにやろうとするのは、ハッピーさんくらいのものだな」と。
記事は数日後、削除されました。
事件の事を忘れかけた、とある日、一通の封書が届きました。
「この度は大変ご迷惑をおかけいたしました」という手紙と、1000円札が1枚入っていました。
最後の最後に約束を守ったハッピーさん。今はどこでどうしているのやら。案外【余命いくばくもない】という名目で、女性をナンパしているかもしれませね。
という大事件が起きたことを、ここに「晒した」ところで今回はこれで筆を置きます。
では、また
きよ

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